ハッピーノイズ





~「やさしい社会」はどこに行った?~

理事 本間 信治

   出勤時、自宅に近い公立小学校から子どもたちの歌声が聞こえてくる。思わず深呼吸!子どもたちの声、特に歌声はいいものだ。朝から元気が出る。明るい気分になる。子どもの声は、昔から諸外国でも“ハッピーノイズ”といわれるという。街の元気を生む力となるものだ。

   私は、この小学校で「コミュニティスクール推進委員」を務めさせていただいているが、その席上で、そのことを発言すると、PTA会長さんから意外な言葉が・・・。「そういうふうに、子どもたちの声を良く受け取っていただけることはうれしいことです。しかし、実情を言えば、『子どもの声がうるさい!』という苦情が寄せられることが多くなってきているのです。」これには驚いた。日本はもっとやさしさにあふれた社会ではなかったか?そんなにやさしさと余裕がない社会にいつからなってしまったのだろうか。

   高齢の父親がいわゆる“ひきこもり”傾向のある息子を殺害するという、練馬区で起きた痛ましい事件も、近隣の小学校の運動会の音を「うるさい」「殺す」などと言った息子の言葉が引き金になったとも言われている。これに限らず、子どもの声を良いものだと思える感性が、人々の心から失われてきているようだ。
 通勤時間の電車にのってきたベビーカーの赤ちゃん連れのお母さんにたいする、「迷惑だ」という批判にも、私は暗い気分になる。

   豊かさ、便利さ、利便性、効率、そうしたものと引き換えに、私たちが失ったものも大きい。今、社会にたまってきた怒りなど「負の感情」を風船の中につめたとしたら、10年前に比べれば数倍にも風船は膨らんできている、と私は感じる。

   怒りの感情と正しく向き合うこと、怒りの感情を自認して、その感情が引き起こす危険を自力で回避すること、これはたいへん重要な課題となっていると思う。
 特に、まだ表現力が乏しい子どもにとっては、自分の怒りの気持ちを他人に理解してもらう方法が身についていないため、つい、他人や社会への暴力によって、自分の感情を表現しようとする、あるいは解消しようとする危険がある(大人も例外ではない!)。

   しかし、当然のことだが、暴力や暴言などで、根本的な解決に至ることはない。まずは、自分の心に向き合い、冷静に解決策を考えられるようにすること、すなわち、自分の怒りの感情からの危険回避の方法を身に付けることが重要だと考える。
その有効な方法は、当研究所が提唱している「ユースレジリエンス体操」「瞑想」である。

   怒りの感情、特に「自分は周りから理不尽な扱いを受けている」という“不公平感”やプライドを傷つけられた、という気持ちが心に充満すると、冷静な判断力は失われやすい。すなわち「爆発の危険」の兆候である。そんな時は、まず正常な判断ができる状態まで心を戻すことが重要である。静かに呼吸を整え、自分の心と向き合うこと・・・それによって、人が人を傷つける悲劇が世の中から無くなっていってほしいと願う。

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